第2回 なぜ日本人教師は重宝されるのか
前回は、バレエの先生になれる条件はどの程度?といった話をしましたが、今回はバレエ教室の形態等から、何故日本人のバレエの先生がカナダで重宝されるのかを紐解いていきます。(第1回を見逃した方はこちらから→海外でバレエの先生になる方法①)
カナダで(海外で)日本人の印象はとても良いです、バレエ界に限らず、約束や時間をきっちり守る、真面目、礼儀正しいなどというイメージがあるようです。
そういった言葉を聞くと、後世代の為にも恥じない行動をしなきゃなー、と思ったりします。
バレエ界で日本人教師が重宝される理由はいくつかあります。そしてその理由の一つには上に上げたようなことも含まれますが、日本とカナダの現在のバレエ教室の運営の違いを見ると、わかる気がします。
日本のバレエ教室
日本の現在の多くのダンス教室は、教室自体がそれぞれに特化したスタイルに分けられていることが多いです。例えば、ブレイクダンスならブレイクダンス教室、バレエならバレエ教室、モダンバレエならモダンバレエ教室、ジャズならジャズダンス教室等といった感じです。そのせいもあってどのダンサーもどれか一つに特別に秀でており、そのほかのダンス経験はそのサポートとして存在するといった感じでしょう。
最近は多くのクラシックバレエ教室でも、積極的にコンテンポラリーのクラスを取り入れているようですが、あくまで主体はクラシックというところは変わっていない様に感じます。
カナダのバレエ教室
カナダのバレエ教室も一昔前までは日本と同じような感じだったそうです。私が研修中にお世話になったロイヤルアカデミーの先生もバレエ一本で教えていたけれど、時代のニーズに合わせて今ではジャズやコンテンポラリーの先生を雇って、いろいろなクラスが受けられるような形態をとっているようです。ですから、生徒は月曜日はバレエ、火曜日はジャズ、水曜日はコンテンポラリーといった感じで、スケジュールを組んでいます。 誤解を招きたくないので一言書いておきますが、もちろんカナダにも専門性を保って教えているバレエ教室は沢山あります。
さて!
この違いを見てみると、少し「なぜ、日本人が重宝されるのか」少し見えてきません?
バレエの事だけに注目してみると、クラスを受ける回数が週一回の生徒と、週三回の生徒では、技術の差が出るのは必然かなと思います。
私は、カナダではバンクーバーとユーコンの事情以外は聞いて知った程度ですが、少なくともバンクーバーやユーコンでは、クラシックバレエの技術や知識を兼ね備えた先生が足りていないように思えます。
理由は上記にあるカナダのダンス教室の形態です。いろいろなダンスを小さいころから学ぶのが悪いとは思いませんが、クラシックバレエのことになってくると話は違います。
例えば、コンテンポラリーダンスクラス以外経験のないダンサーが、突然クラシックバレエをやってみろと言われても、なかなか難しいです。クラシックバレエは「ダンス全般の基本」とも言われています。クラシックバレエ一本でやってきたダンサーが、コンテンポラリーに移行するのは前者と比べればハードルも低いでしょう。
ここまで読んでくれたなら、もう大体お判りでしょうが、どんなにいろいろなダンスを教室で扱っていても、それぞれの分野にはそれぞれの専門家を雇いたいと思うのが経営者の意向です。しかし、いろいろなダンスをまんべんなくといった環境で育ってきたダンス教師は、いまいちバレエに弱いという特徴があります。(その代わりいろいろなダンスのクラスを教えられるといった長所もありますが)。それに引き換え、日本人のバレエ経験者はほかのダンスは知らなくともバレエの技術は平均以上であることが多いのは、日本のシステムが反復練習が大事とされるバレエに合っているのかもしれません。。
もちろん上記に上げた例は、プロもしくはプロ並みに踊れるダンスの先生ではなく、第一回でも書いたようにダンスの経験があるのでそれを生かして仕事をしたいというレベルの話です。
最後に、私がカナダに10年住んでいろいろと感じたことの中で、日本人にとっての習い事の在り方の違いも大きいと気づきました。もちろん人それぞれですから、全員がそうではありませんが、多くのお教室ではみんながプロになりたいと思っているわけではなくても、普段の生活を犠牲にしてでもコンクールや舞台に全精力を注ぐというのは、珍しいことではないでしょう。また、クラシックバレエ専門で舞台をやっているので、クラシック作品に関わる事が出来るのも、大きな宝です。経験したことがあるのと、本で調べたのではやっぱり知識量に差が出ますよね。
と、まあカナダと日本の違いから、何故日本人が重宝されるのかの思い当たる理由をだらだらと書いてみました。
まとめ
カナダでは、いろいろなダンスを同時に学ぶ形態が流行っているので、バレエに特化した先生が不足しがちです。しかし経営者はバレエ専門の先生を雇いたいと思っている。専門性の高いトレーニングを受けている日本人ダンサーには需要がある。
どうでしたか? 次回、第3回では、いよいよ具体的に海外生活とバレエの先生になるという事を実現させるためまず何をすべきか、どんな方法があるのかを紹介していきますので、お見逃しなく!